東京高等裁判所 平成2年(行コ)33号 判決 1991年2月05日
東京都杉並区上井草一丁目二八番一六号
控訴人
中塚和子
右同所
同
亡 中塚昭子承継人 中塚史朗
東京都杉並区上井草一丁目一三番一四号
同
中塚正樹
右三名訴訟代理人弁護士
脇田忠
同
藤川成郎
東京都杉並区天沼三丁目一九番一四号
荻窪税務署長 權田進
右訴訟代理人弁護士
伴義聖
右指定代理人
杦田喜逸
同
小川健
同
寺島進一
右当事者間の所得税再更正処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
(申立)
控訴代理人らは、「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人中塚和子、同中塚正樹及び亡中塚昭子に対して昭和六〇年九月三〇日付でした被相続人中塚ヒサの昭和五八年分所得税についての各更正及び各過少申告加算税賦課決定(但し、審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人らは主文第一項と同旨の判決を求めた。
(主張及び証拠関係)
次りとおり付加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三枚目表六行目「、3」を削り、同裏四行目の「その者」を「遺贈者」と、同六枚目裏七行目及び同七枚目表二行目の各「なくして」を「なしに]と改め、同八枚目裏八行目の「所有で」の次に「、」を、同九枚目裏五行目の「乙土地」の次に「部分」を、同一〇枚目表五行目の「未満」の次に「の端数を」をそれぞれ加え、末行の「の規定」を削り、同裏一行目及び三行目の各「基づき」を「より」と、「端数」を「端数を」と、九行目の「規定し」を「規定され」とそれぞれ改める。
2 同一一枚目裏九行目の「評価は」の次に「、」を、同一二枚目表二行目の「乗じ」の次に「(185,000×137.55+185,000×0.97=75,123,246(円))」をそれぞれ加え、同一一枚目裏一〇行目の「ところ、本件申告は」を「。本件土地の更地価格の評価は」と、同一二枚目表五行目の「減額をし」から九行目の末尾までを「減額すべきである(75,123,246(1-0.2)=60,098,596(円)。」とそれぞれ改める。
3 同一二枚目表一〇行目の「(二)」を「(三) なお、」と同裏五行目から六行目にかけての「本件共同住宅の敷地部分」を「本件土地」と同行の「右(一)における」を「前記の」と、七行目から八行目にかけての「範囲内のものとして」を「範囲内であり、右見地からしても」とそれぞれ改めた上、同表一〇行目から同裏八行目までを同一三枚目裏二行目の次に移す。
4 同一二枚目裏九行目の「(三)」を「(二)」と改め、同一三枚目表一〇行目の「本件土地」の次に「の価額」を同裏一行目の「パーセント」の次に「(借家権割合六〇パーセント、借地権割合三〇パーセント)」をそれぞれ加え、同行の「控除」から二行目の末尾までを「控除すべきであり、四九二八万〇八四八円(60,098,196×(1-0.18))となる。本件申告はこれに従ったものである。」と改める。
5 同一四枚目表一〇行目の「ところ」を「ので」と、同一五枚目表七行目の前の「被相続人」を「相続人」と、八行目の「していた」を「している」と、同一八枚目表六行目の「譲渡所有」を「譲渡所得」と八行目の「精算」を「清算」と同一九枚目裏四行目の「相続税額」を「相続財産」と、同三九枚目略図中の各「一号」を「一」と「八号」を「八」とそれぞれ改める。
理由
一 当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり訂正するほか、原判決の理由として説示するところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決二一枚目裏一〇行目の「規定し」を「規定され」と、同裏末行の「乗じて」を「乗じ、」とそれぞれ改め、同二二枚目裏八行目の「一応の」を削り、九行目の「価額は」の次に「、」を加え、同二三枚目表八行目の「よらない」を「よってではなく、被相続人の死亡という当事者の意思に関らない」と同裏二行目の「価値の増加益(キャピタルゲイン)を清算して」を「当該資産に係る価値の変動を清算して生じた増加益(キャピタルゲイン)について」とそれぞれ改め、三行目の「相続税は、」の次に「相続という財産関係の主体たる地位の包括的承継と相続財産の社会的再配分との適正な均衡という配慮の下に」を五行目の「異にする」の前に「著しく」をそれぞれ加える。
2 同二四枚目裏一行目及び同二五枚目裏三行目の各「なくして」を「なしに」と、同表八行目の「見る」を「みる」と、同二七枚目表二行目の冒頭から三行目の「土地」までを「収益力において自用地と異なるところがないとされた賃貸土地」とそれぞれ改め、同二六枚目裏一〇行目の「相当な地代」の前に「前記の意味での」を、同二七枚目裏五行目の「しかし、」の次に「相続税における課税対象の評価については前記のような特殊性が存するのみならず、」をそれぞれ加え、同表三行目の「第三者と」から四行目の「異なり、」までを、同二八枚目裏四行目の「また、」から末行の「ではない。」までをそれぞれ削る。
3 同二九枚目表一〇行目の末尾に「なお、右のように借地権による減額をする以上、更に貸家建付地としての減額をする必要はない。」を加え、同裏七行目から同三〇枚目表五行目までを削り、同裏三行目の「本件土地」から六行目の「すぎない」までを「本件土地上建物の居住者及び丙土地部分の西側隣地上の柿木荘所有の貸家の居住者等であり、本件土地の最有効利用のためには丙土地部分を通路とすることが適切である。」と改める。
4 同三〇枚目裏一〇行目の「本件申告において、」を削り、末行の「評価した」を「評価すべき」と、同三一枚目表九行目の「自用地」を「更地」と、同裏二行目及び一〇行目の各「評価した」を「評価すべき」と、七行目の「評価」を「評価方法」とそれぞれ改め、同表五行目の「あるから、」の次に「対象地全体を均質なものと把握して評価した公示価格を基準としている」を加え、同裏一行目及び九行目の各「本件申告において、」を削る。
5 同三三枚目表末行の「いるが、」から回裏六行目の「適当ではない」までを「いる。しかし、遺留分減殺請求があれば、遺留分を侵害する限度において遺贈はその効力を失うものの、受遺者は、現物の返還をするか価額弁償をするかの選択権があり、相当価額の弁償をすることにより、現物返還義務を免れることができる。しかも遺留分減殺請求権を行使するかどうかも遺留分権利者の任意である上、行使の時期も時効によって消滅するまで確定的ではない。のみならず、受遺者が価額弁償を選択した場合、弁償を条件として目的物の所有権が確保できる半面、弁償額は観念的には遺留分相当額であっても、現実に弁償すべき額は当事者双方の合意ないしは訴訟等により定まるのであるから、遺贈の効果の発生と遺留分減殺の具体的効果の発生との間に時間の経過が常に存するところ、後者の効果の発生が、相続を原因としてされた課税処分に相続開始時に遡及して影響するものとすると、課税処分の効力を不安定なものとし、客観的に明確な基準に従って迅速に処理することが要請されている課税事務の円滑な遂行を著しく阻害することになる。」と改め、同三四枚目表三行目の「解すべきである。」の次に「このように取り扱っても、受贈者の利益を甚しく害するものではないし、法律的効果の変動とも符合し、具体的な利益の実現状況にも即応するものであって、相当というべきである。」を加える。
6 同三五枚目表七行目の「しかし、」の次に「相続分は分数的割合によって定められており、相続分の指定は、被相続人によってされる相続分の修正であり、個々の相続財産のどれを相続人に与えるかとの被相続人の意思とは目的を異にするものであるから、同じく分数的割合によるべきものである。従って、」を加える。
二 よって、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条一項に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 丹野達 裁判官 加茂紀久男 裁判官 新城雅夫)